挑戦!
IMUGE.を沖縄第二の地酒に!
【漢那】以前から甘藷の酒をつくりたいという思いはあったんですが、なぜ今沖縄で芋焼酎かという決め手に欠けた。つくる理由がなかった。そんな時、県工業技術センターの豊川哲也さんが「こんな酒があるんだが…」とイムゲーの話を持ち込んで来られて。沖縄にそんな地酒があったことにまず驚き、試飲してまたびっくり。「昔の人はこんなにおいしい酒を飲んでいたのか」と。これはいける!と思いました。沖縄の歴史に根差した酒ならば、どれだけでもエネルギーを注ぐことができる。だから、やるべきだと。
【砂川】2016年に僕が沖縄県酒造組合青年部の部長に就任して、「これからの泡盛業界は厳しい。とにかくやれることからやっていこう」と意気込んでいた時、漢那さんからイムゲーの話を聞きました。考えてみると、泡盛はもともと本島首里の酒だけど、実は各離島にも本島の各地方にも独自の酒文化があったわけで、その沖縄文化の多様性を体現するイムゲーを商品化できたら、沖縄の酒造業界の発展につながるはず、とその時大いに盛り上がったんです。
【漢那】IMUGE.は「地産地消」。生産が本格化すれば加工用の甘藷の需要が高まって、意欲のある地元の農家の人たちにとっては、大きなビジネスチャンスになる。昔は沖縄でも甘藷をたくさんつくっていましたが、今は需要がないためにほとんどがサトウキビ畑です。でも、もともと甘藷も沖縄の気候風土に合った作物だから、 ほかの作物に比べてとてもつくりやすい。栽培に手間がかからないところは、農家にとっても大きな魅力だと思います。
【島袋】自分たちは「地産地消・地消地活」という言葉をよく使います。これは地元で生産された物を消費することで、地元に活力が出るということです。沖縄は日本屈指の観光県ですが、観光産業だけでは地域は活性化できない。主力産業にはなり得ないんです。そこで、IMUGE.の生産にあたっては、原料として使う甘藷と黒糖を沖縄産に限定させるというルールを作ることによって、沖縄で生産される甘藷の量が上がってくる。そして、それを使ってお菓子などいろんな商品が開発されるようになる。というように、第一次産業、第二次産業がお互いに押し上げ合うことで、地元に活力が出てくるということです。
【漢那】沖縄は水資源に乏しいので、大きな第二次産業ははなから誘致できない。そうなると、やはり農業なんです。IMUGE.を生産することで地元の農業を活性化して、さらにまちおこしにつなげていきたい。地元で商売している人たちは島をよくしたいという、何かしらそういう意識はみな持っています。僕らはそういうことに取り組める立場にあるわけだから、挑戦しない手はないだろうなと。
【砂川】宮古島のうちの田舎は、限界集落。60 歳で若いといわれる。何でそうなったのかというと、農業がもうからなくて次の世代が農業をやらないから。離島の田舎がどんどん廃れていってます。自分たちが懸命にIMUGE.に取り組むことによって、もしかしたら、そんなふるさとに恩返しできるかもしれない。そして、それが業界に対する恩返しにつながり、回りまわって自分たちの商売もよくなる。こんな楽しいことはないじゃないですか。
【漢那】酒のつくり手から見ても、IMUGE.は魅力的なお酒です。奄美の黒糖焼酎は特例として、今の酒税法では焼酎には糖類は入れられない決まりになっている。だから黒糖を入れるIMUGE.は、酒税法上は焼酎ではなくスピリッツに分類されるわけですが、「麹」「甘藷」という要素にさらに「黒糖」が加わったことで、酒自体の幅がものすごく広がりました。例えば、黒糖の量を増やしてラム酒っぽくもできるし、紅芋・白芋・橙系の芋など甘藷の種類でも味わいは変わる。3つの要素に変化をつけることで、味のバリエーションが限りなく広がっていく。本当に魅力的な酒だと思います。
【砂川】これから沖縄のお酒はIMUGE.と泡盛の二本立てで、泡盛は古酒で勝負したいですね。現在、沖縄には泡盛酒造所が47蔵ありますが、IMUGE.の成功、さらには泡盛の復活で30年後も47蔵残っていたら、僕らの今回の取り組みも意義があったといえる。
【島袋】ハードル、高(たか)! 最初から順調にいくかどうかは運もありますが、とにかく僕らが美味しいものをつくりさえすれば、結果は自ずとついてくる。今後はIMUGE.の生産をほかの酒造所にも広げ、それぞれが個性あるIMUGE.をつくって、業界全体でこのIMUGE.を、泡盛に並ぶ「第二の地酒」に育てていきたいと思っています。
IMUGE.で
地産地消・地消地活!
IMUGE.用に新たに耕作された畑での甘藷収穫。今後IMUGE.の増産で甘藷畑もさらに拡大し、地元の農業が活性化。若者たちもふるさとで働き、町が栄えて酒造業も潤う。これがIMUGE.プロジェクトが目指す「地産地消・地消地活」のカタチだ。
これだけ多様性が叫ばれている時代に、沖縄の酒も泡盛一辺倒では面白くないじゃないかという思いがありました。歴史をさかのぼってみると、実は沖縄にもいろんなお酒があって、イムゲーはその中でも庶民に一番愛されたお酒でした。このイムゲーには中国系の酒造技術も入っていて、専門的にみても非常に興味深いものがあります。それを今の酒造技術に置き換えて、現代版イムゲーが誕生。3年前、漢那さんが僕の提案に興味を示してくれなかったら、多分イムゲーは今も幻の酒のままだったでしょう。
IMUGE.の本格販売に向けて、地元農家に甘藷栽培を依頼した漢那さん(右)。かつては主食だった甘藷だが、今は生産量もわずか。「甘藷はもともと沖縄の気候風土に合った作物だから、沖縄の農業にとっては大きなビジネスチャンスになるはずです」。
2021年、IMUGE.プロジェクトに4社目として「今帰仁酒造」が参加。
有限会社 今帰仁酒造
代表取締役社長
大城 洋介
私どもは今帰仁の地にこだわって、酒造りを行なっています。沖縄本島の酒造所としては初のIMUGE.プロジェクト参加となります。プロジェクトを通じて、琉球王朝の歴史を紐解くと泡盛以外のお酒としてIMUGE.があることを知りました。地元の甘藷と黒糖を使用するこの庶民に愛されたお酒は、これからの時代に限り無い可能性と、沖縄のお酒の未来を象徴させる浪漫があります。